カレーパンNo.1を競うコンテスト「カレーパングランプリ」が開催され、パン好きのみならず日本国民を熱狂させているパン屋さんの定番商品「カレーパン」。「日本カレーパン協会」や「全日本カレーパン振興会」といった、カレーパン愛好家による団体も立ち上がるなど、その人気は衰えることを知りません。
さらに近年では、ご当地カレーパンや進化系カレーパンが登場したり、カレーパンのみを扱う専門店も続々誕生したりするなど、カレーパン界隈は年々賑わいを増しています。
そんな私たちの生活に根付いているカレーパンですが、その歴史について知る人は以外に少ないはず。そこで本記事では、カレーパンの誕生秘話に注目!好きなパンランキングで常に上位をキープしている人気&定番パンがいつ、どこで、誰の手によって生まれたのか、知られざる真相に迫ります。
パン生地でカレーを包み、衣を付けてカリッと揚げる、おなじみのカレーパン。2021年には日経トレンディ発表の「ヒット予測ランキング」に新たな形のカレーパンを意味する「NEOカレーパン」がランクインするなど、定番でありながらも、日々進化を遂げています。
カレーは言わすと知れたインド発祥の食べ物ですが、日本で親しまれているとろみのあるルーのなかにゴロゴロと大きめの具材が入ったカレーは日本独自のもの。海外でも、日本のカレーは「日本食」として人気を博しています。そして、そのカレーを閉じ込めた「カレーパン」も、実は日本生まれ!日本に洋食が普及し始めた1920年代以降、日本人の舌に合う洋食を追い求めるなかで生まれ、国民に愛されるパンとして発展していきました。
ただ、いつどこで生まれたかに関しては諸説あるようです。ここでは、最有力説を含め、日本のカレーパン誕生にまつわる3つのエピソードをご紹介します。
カレーパンのルーツとして最も有力視されているのは、東京都深川区常磐町、現在の江東区にあったパン屋さん「名花堂」の2代目・中田豊治氏が、1927年に新しいアイデアを保護する権利である実用新案登録を行った「洋食パン」。ただ、この案で提示されていたのは「具の入ったパンをカツレツのように揚げる」ということのみ。つまり、カレーに関しては、一切触れられていなかったのです。
1877年に創業した名花堂は、1923年の関東大震災で被災したあと、復興を兼ねて新しいパンを作ろうと試みます。それが、当時日本に浸透し始めた洋食のなかでも群を抜いて人気だったカツレツとカレーの要素を組み合わせたパン、つまり、カレーを包みカツレツのように揚げる「カレーパン」だったのです。
通常のパンのように焼き上げるのではなく、揚げるという調理法を選んだのは、カレーの水分量が多く焼くのが難しかったからなのだとか。苦肉の策ともいえますが、あえて選んだこの方法が斬新なアイデアとして注目され、当時はまだ食卓に並ぶほど身近ではなかったカレーを1個8銭(現在の200円に相当)ほどで味わえるとして大ヒット。次第に全国各地に広まっていきました。
名花堂は現在も「カトレア」の名で営業を続けており、"元祖カレーパンのお店"として地元民のみならず全国のパン好きに親しまれています。ちなみに、カトレアでは、カレーパンのルーツとされている食べやすい甘口の「元祖カレーパン」と、ルーを辛口に仕上げた「辛口カレーパン」の2種類が販売されており、カレーパンだけで1日1,000個以上売れることもあるのだとか。カレーパン好きなら、ぜひとも訪れたいお店といえるのではないでしょうか。
2つ目の説は、東京都練馬区で1934年に創業したパン屋さん「デンマークブロート」の創業者である井戸錠氏が生み出したというもの。はじめはカレーを挟んだサンドイッチや、あんぱんのようにカレーを包んだ商品を考案していましたが、思うように売上が伸びず……。そんなとき、井戸氏の兄が経営していたお総菜屋さんに並んでいたトンカツからインスピレーションを受け、衣を付けて揚げる方法に辿り着いたのだそうです。
トンカツがヒントとなっていたことから、当時は草履のような形をしていたというデンマークブローとのパン。一説では、インスピレーションを受けたのはトンカツではなく、パン屋さんの名店「新宿中村屋」で販売されていた「ピロシキ」だったともいわれています。
この記事によると、井戸錠市さんは、最初はカレーサンドイッチや、あんぱんのようなカレーパンを製作するも鳴かず飛ばず。そんな試行錯誤を繰り返しているとき、お兄さんの経営する総菜屋で売っていたトンカツもヒントに(または中村屋で販売していたピロシキをヒントに)、衣をつけて油で揚げるカレーパンを生み出したとのこと。最初に作られたカレーパンは、トンカツに似せた形状だったため、薄く伸ばされていて草履のようだったそうです。
デンマークブロートは現在も「デンマークベーカリー」として、練馬区を中心に数店舗展開する人気ベーカリーとして愛されています。発祥のお店としては「名花堂説」が強いものの、雑誌に掲載されたこともある「デンマークブロート説」も、無視できないエピソードといえるでしょう。
「新宿中村屋」も、カレーパン発祥のお店として名前があがることのあるパン屋さんの一つ。ただし、これには少々複雑な事情があるようです……。1901年に創業し、クリームパンやワッフルなどのヒット商品を次々と世に送り出していた新宿中村屋。1915年、文化人と繋がりの深かった創業者の相馬愛蔵氏は、日本に亡命しているインド人の独立運動家ラス・ビバリ・ボーズ氏を匿ってほしいとの依頼を受けます。
中村家の離れで暮らすこととなったポーズ氏は、その後相場氏の娘・敏子さんと結婚し、新宿中村屋の役員に。1927年、関東大震災の被害を免れ賑わいを増していた新宿で新たに喫茶店を開業しようと計画していた相馬氏は、ポーズ氏より看板メニューとして本場インドのカレーを提案されます。これによって生まれた「純印度式カリー」は、瞬く間に大ヒット。しかし、第二次世界大戦が始まったことで食材の供給が滞り、次第に提供が難しくなっていきました。
この打開策として採用されたのが、"小さいパン屋の真似"をして作った「カレーパン」だったのです。1940年に販売が開始されたこのパンは、前述のエピソードが示す通り、とあるお店の商品を模倣したもの。「小さいパン屋」がどこのお店のことであるかは、未だ謎に包まれているそうです。つまり、新宿中村屋が元祖、とはいえないのかもしれませんが、東京の名店が販売を開始したことで、カレーパンの認知が急速に広まっていったことは明らか。ルーツではなくとも、カレーパンの発展における新宿中村屋の功績は非常に大きいといえるでしょう。
カレーはもともとインドの伝統料理。日本で見かけられるようになったのは、江戸時代末期の1853年、アメリカの軍人マシュー・ペリーが来日した黒船来航以降といわれています。また、日名修好通商条約締結の翌年1859年に横浜港が開港したことで、他の西洋料理とともにカレーが伝わったともされ、当時の記録には「幕府の使節団が船上でインド人がカレーを食べているのを見た」との記述も残されているそうです。
ただし、日本のカレーのルーツは厳密にいえばインドではなく、長年インドを植民地化していたイギリスにあるとする説も。カレーのルーツに関しては、カレーパンの起源以上に謎が深いため、ここでは代表的な説の紹介に留めることとしましょう。
カレーパンには、発祥のお店や歴史以外にも知られざる秘密が!?ここでは、話のネタにもピッタリなカレーパンのおもしろ雑学をご紹介します。
「日本で一番美味しいカレーパンはどれだ?」を合言葉に、日本カレーパン協会が2016年から開催している「カレーパングランプリ」。毎年全国各地のベーカリーや飲食店が、工夫を凝らした自慢のカレーパンを出品しており、協会会員と一般参加者によるインターネッ投票によって順位が決定します。
ここで、2024年度の全7部門グランプリをみてみましょう。
【西日本揚げカレーパン部門】牛肉ゴロゴロカレーパン(ベーカリーピカソ/愛知県名古屋市)
【東日本揚げカレーパン部門】富士山麓こだわりカレーパン(ブランジェ ベックファン/静岡県御殿場市)
【西日本焼きカレーパン部門】 禁断の肉肉カレーNEO(AKINE BREAD/京都府京都市西京区)
【東日本焼きカレーパン部門】ごろごろシーフードの焼きチーズカレーパン(ベーカリー&カフェ マルージュ 大山本店/東京都板橋区)
【チーズカレーパン部門】 北海道産牛のカレーパンフォンデュ(ペンギンベーカリー/北海道札幌市清田区)
【キーマカレーパン部門】信州牛のキーマカレーパン~隠し味・八幡屋磯五郎七味唐辛子~(SANCH 佐久ファクトリーショップ)
【バラエティ部門】大人のやみつきスパイシーカレーパン(杏林堂薬局袋井下山梨店/静岡県袋井市)
あなたの街のパン屋さんも、密かにエントリーしているかもしれません。ぜひチェックしてみてくださいね。
日本カレーパン協会では、「カレーパンのマナー」というおもしろいトピックが紹介されています。一部をご紹介しましょう。
読んでいるだけでほっこりしてしまう、カレーパン愛に溢れた項目ばかりですね。
カレーパンは、カレーパングランプリの部門区別にもあるように、大きく「揚げ」「焼き」の2種類に分けられます。さらに、パンの形や辛さ、ルーの色・とろみ、パンの食感、衣の細かさなど、バリエーションは無限大です。
形だけを取り上げても、ラグビーボール型、丸型、ナン型、タワシ型、オープン型などさまざま。細かいパン粉が、クルトンのようなザクザクとした衣かによっても、その姿は大きく異なります。「カレーパンといえばコレ!」というお気に入りがある方も、全国の味を食べ比べることで、自分のなかのカレーパンの概念が覆るかもしれません。
「カレーを気軽に食べられるように」そんな想いから生まれた日本生まれの「カレーパン」。今やパン屋さんの定番商品、そして好きなパンランキングの常連となったカレーパンは、今後も新たな展開を迎えながら、私たちの舌を楽しませてくれることでしょう。
歴史的背景を思い浮かべながら、カレーパンをおうちでじっくり味わってみたいという方は、カレーパン入りのパンスクボックスを試してみてはいかがでしょうか。「パンスクギフト」は、全国各地の有名ベーカリーのパンをご自宅でお楽しみいただける、冷凍パンのギフトボックスです。全国から集めたさまざまな名店のギフトのなかには、カレーパン入りのボックスもございます。
贈り物にはもちろん、自分へのご褒美にもぜひ!詳しくはパンスク公式サイトをご覧くださいね。
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