基本的な材料は小麦粉、塩、水、砂糖、イーストのみ。卵や牛乳、バターなどの動物性タンパク質・油脂を使用せず、発酵させた生地を茹でてから焼くという独特の製法で作られる「ベーグル」。ヘルシーかつ噛みごたえ抜群で満腹感を得られることから、「罪悪感のないパン」として健康意識の高い人々からも注目されています。
ベーグルといえば「NYベーグル」を思い浮かべる方も多いはず。では、ベーグルはアメリカ・ニューヨーク発祥なのでしょうか?答えは……、NO!ベーグルの起源は諸説ありますが、最も信憑性が高いのは「東ヨーロッパ発祥説」とされています。
名前の由来としては、インディッシュ語で「円形のパン」を意味する"bugel"から付けられた、ドイツ語で乗馬のあぶみを指す「bügel」の形に似ていることから名付けられた、などの説がささやかれているのだそう。
ここでは、数ある説のなかでも特に有力なものを取り上げ、文化や宗教殿複雑な事情が絡み合うなかで生まれたベーグルの歴史をひも解きます。
ベーグルの原型とされているのは、「オブヴァジャネック」と呼ばれるドーナツ状のパン。これは、14世紀の東ヨーロッパ、現在のポーランドのあたりに移り住んだユダヤ人によって作られたもので、14世紀の文献にも「リング型のパン」として記録されています。
元祖ベーグルともいえるオブヴァジャネックは、欧州連合の法律により保護されており、「南ポーランドのクラクフ、あるいはその近郊のみで生産されたもの」「手作りされたもの」のみが名乗ることを許されいます。該当地域では、現在も移動型の小さな屋台で販売されているそうです。
ベーグルの原型が生まれたのは14世紀。しかし、現在親しまれているベーグルのルーツは、16世紀のポーランドにあるといわれています。
当時、ポーランドで貧しい暮らしを強いられていたユダヤ人が口にしていたのは、ライ麦で作ったパサパサとした食感の黒いパン。しかし、ユダヤ教で重要とされる安息日(金曜日の日没~土曜の日没)だけは、神への感謝を示す意味を込めて、白い小麦で作ったパンを食べていました。
ただ、ユダヤ教の食事にまつわる教えには「親と子の関係になる食べ物を同時に食べてはいけない」という決まりがありました。そのため、バターや卵を使用したパンは、親となる肉類を使った食事と一緒に出せないという問題点が。そこで生まれたのが、乳製品や卵を一切使用せず焼き上げる「ベーグル」だったのです。
ユダヤ人の信仰心から生まれたパン、ベーグル。しかし、度重なるユダヤ人への迫害、それに追い打ちをかけた1928年の世界大恐慌や、1939年に始まった第二次世界大戦でのユダヤ人排斥運動によって、その歴史は断絶の危機に瀕します。
当時、ユダヤ人が経営するベーカリーは閉鎖を余儀なくされ、ユダヤ人たちは迫害を逃れるため身元を隠して生活するようになります。時を同じくして、ベーグルが食卓に並ぶこともなくなりました。
大戦が終わる頃には、ヨーロッパのユダヤ人は虐殺や移住によって激減。ベーグルの存在は、忘れ去られようとしていました。
姿を消しかけたベーグルが再びに日の目を見るきっかけを作ったのは、迫害を逃れアメリカに移り住んだユダヤ人たちでした。
アメリカにベーグルが伝わったのは、1900年前後。ユダヤ移民の居住区内でのみ食べられていたベーグルは、やがてユダヤ人以外にも認知されるようになります。当初、ユダヤ人を含む移民労働者は、劣悪な環境のパン工場で低賃金での長時間労働を強いられていました。そのなかで作られていたのが、ユダヤ人が神への感謝とともに食していたベーグルだったのです。
1907年、移民たちが置かれた状況を改善しようと、ニューヨークのベーグル職人が「国際ベーグル職人組合」を結成。さらに、1960年代にはベーグルを作る機械が導入されたことで大量生産が可能となり、ベーグルはアメリカ全土へ急速に広まっていきました。
アメリカでの大ヒットしたベーグルが、日本で広まり始めたのは1980年代のこと。その立役者となったのは、アメリカから日本へ派遣されたジャーナリストのライル・B・フォックス氏でした。
日本に渡って以降、大好きなベーグルが食べられないことを残念に思っていたフォックス氏は、ベーグルを手作りするように。1982年には、ベーグル店「フォックス・ベーグル」をオープンさせます。
さらに10年後の1992年には、ベーグルを輸入販売するお店「Bagel K」を手がけ、これによってベーグルは日本国民の間に浸透していきました。
今では、1997年に第1号店を開業した「BAGEL&BAGEL」をはじめ、多くのベーグル店がひしめき合っている日本。この原点となった「フォックス・ベーグル」は2002年に閉店しており、その味を確かめることができませんが、一人のベーグル好きの行動力が今の日本のベーグル人気に与えた影響の大きさは計り知れません。
生地をドーナツ状に成型し、茹でてから焼き上げるのが一般的なベーグルの作り方。しかし、世界中に広まるなかで、それぞれの国で独自の発展を遂げていったところも、ベーグルの興味深いところです。ここで一例として、4つの国のベーグルを比較してみましょう。
国によって、味も食感もさまざまなベーグル。各国を訪れた際に、日本で慣れ親しんだベーグルとの違いを楽しんでみるのもおもしろそうですね。
ベーグルには、発祥の地や国による違い以外にも知られざる秘密が!?ここでは、話のネタにもピッタリなベーグルのおもしろ雑学をご紹介します。
ベーグルの日は、日本各地に店舗を構え、オンライン販売も行っているベーグル専門店「ジュノエスクベーグル」を運営する株式会社Eight(前・常盤産業株式会社)により、2008年に制定されました。
ベーグルには「16世紀ポーランドで安産のお守りとされ"終わることのない人生の輪"を意味するとされていた」という説もあることから、無限大を示す∞の形をとって「8月8日」をベーグルの日としたそう。現在では、記念日にあわせて新作や人気商品の詰め合わせセットが販売されるなど、各ベーグル専門店で独自のイベントやキャンペーンが展開されています。
「親と子を一緒に食べてはならない」つまり、肉類と乳製品、卵を一緒に食べてはならないというユダヤの掟に反することなく、肉と一緒に食べられるパンとして生まれたベーグル。ただ、このベーグル誕生にはもう一つ、注目すべきエピソードが残されています。
迫害の歴史のなかで安住の地を得られず、常に移動を余儀なくされていたユダヤの人々。いつ襲撃されるかわからない状況下にあった彼らにとって優れた食事とは、「小さくて硬い、持ち運んでも潰れないもの」でした。この条件をすべてクリアする食べ物、それがベーグルだったのです。
この頃は、味は二の次。逃げる生活に適した食事パン……、私たちが美味しく味わっているベーグルには、悲しい歴史も紐づいているんですね。
卵やバターを使わず、茹でてから焼き上げる「ヘルシー」なベーグル。だからといって食べ過ぎると、痛い目に合うことになるかもしれません。
基本的な材料で作ったベーグルは、油分をほとんど含んでいないため、確かにヘルシーです。しかし、日本で販売されているベーグルのカロリーは、1個あたり250kcal前後。発酵の過程が短いベーグルは、水分量や空気の量が少なくギュッとつまっているため、必然的に生地の量は一般的なパンより多くなります。そのため、じつは決して低カロリー・低糖質とはいえないのです。
さらに「ずっしりもっちり」を売りにした大きめの商品や、クリームチーズやチョコレートペースト、フライなどの高カロリーな具材と合わせた商品ともなれば、ヘルシーとは無縁状態に……。ベーグルをヘルシーに食べたい場合は、選ぶ際に大きさや具材に注目したり、サラダやスープなどとあわせてバランスよく食べたりなど、食べ方に注意&工夫が必要です。
もっちりしっとり食感で、私たちの舌を楽しませてくれるベーグル。戒律や迫害の歴史のなかでユダヤ人を支えたパンは数百年の時を経て、世界中の人々に愛されるパンへと変化を遂げました。
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